トークショー
「梅沢富美男さん×木佐彩子さんと学ぶ!介護予防」

日常生活の中で健康を維持するためのポイントや通いの場の役割について、飯島勝矢先生の解説を交えながら、通いの場ナビゲーターの梅沢富美男さん、木佐彩子さんと一緒に学ぶトークショーを開催しました。

<登壇者>
俳優 梅沢富美男さん
フリーアナウンサー 木佐彩子さん
東京大学高齢社会総合研究機構 機構長 未来ビジョン研究センター教授 飯島勝矢先生

「老いの坂道」は可逆性 がんばれば戻ることができる

木佐 今日はご参加いただき、ありがとうございます。ところで「フレイル」って言葉を知っていますか? (会場から手が挙がる)多くの方がご存じのようですね。では梅沢さんに聞きましょうか。

梅沢 えっ、私が知らないと思っているんですか? 知っていますよ! でも、今日は飯島先生がフレイルの予防研究のご専門ですから……。

飯島 パスがうまいですね(笑)。フレイルというのは虚弱という意味ですが、いわゆる老いの坂道の途中段階のこと。健康と介護の中間地点です。

木佐 どんな特徴があるのでしょうか。

飯島 まずは「可逆性」です。老いの坂道は下るばかりではなく、がんばれば戻ることができます。またフレイルは「多面的」です。ひざの関節が痛いなど、どこが弱ったというわけではなく、心や日常生活も含めて、「栄養」「運動」「社会性」を三位一体として底上げしてほしいんです。

梅沢 私なんてよく食べるし、舞台で体は動かすし、日常で劇団員などとも交流がある。普通の方より、はるかに三位一体なんじゃないですかね。

飯島 究極の三位一体ですよ(笑)。ある市町村で高齢者全員を調査したところ、「身体活動(運動)」「文化活動」「ボランティア・地域活動」のいずれも習慣化できていない人は、全てを習慣化できている人に比べて、フレイルのリスクが16倍も高いことがわかりました。さらに注目したいのは、運動は習慣化していないけれど、あとの二つは習慣化できている人に比べ、運動は習慣化できているが、あとの二つが習慣化できていない人は、約3倍リスクが高いんです。

木佐 意外ですね。

飯島 これは運動習慣が否定されたわけではありません。文化活動や地域活動はジョギングのような典型的な運動ではないけれど、普段から例えば「通いの場」に参加していると、結果的に“動いて(運動して)いる"ということになるわけです。さらにこうした場での「人のつながり」が、フレイル予防につながることがわかってきたんです。

楽しいトークで会場を盛り上げる梅沢富美男さん
司会進行役の木佐彩子さん
フレイル予防について丁寧に説明する飯島勝矢先生

どんな人も一歩踏み出せば 予防として継続できそうなことがある

梅沢 (年を取ったら)食べた方がいいですね。

飯島 メタボ予防を意識している方が多いと思いますが、75歳ぐらいになったら「食事をしっかりとらなければいけない」と、考え方をギアチェンジしてほしいです。

木佐 先生、セルフチェックがあるとか。

飯島 「指輪っかテスト」です。両手の親指と人差し指で輪を作り、利き足ではない方のふくらはぎの一番太いところを囲んでみてください。スカスカ感のある方は、だいぶ筋肉が少なくなってきています。要介護になる可能性も高くなります。

梅沢 そうなんです、年を取るとどんどん足が細くなりますね。

飯島 また「イレブン・チェック」というフレイルチェック表も作っています(下図参照)。
「栄養」「運動」「社会性」の分野を合わせた11項目を出題するので、イレブン・チェックといいます。では、皆さんでやってみましょう。

木佐 梅沢さんはいくつ当てはまりましたか?

梅沢 四つです。先生、診断をお願いします。

飯島 まずこの表を作ったのは、右の項目にいくつ当てはまっているという数ではなくて、全ての項目が左側の回答欄に丸が付くように、日常生活を工夫してほしいという前提があります。80代の方でも全ての項目をクリアしている方もいますし、40代でも半分以上が当てはまる方もいらっしゃいます。このチェック表を見て、「自分の日常生活をどう作り込みますか」ということです。それでも一応研究結果からいいますと、回答欄右側の項目に五つ以上当てはまるとフレイル、特に(年を取るにつれて)筋肉の衰える現象の「サルコペニア」のリスクが高くなります。しかも、五つよりは六つと、当てはまる項目が増えていくほど、リスクが2倍以上増えていくことが研究でわかっています。

木佐 梅沢さんは四つでしたから……。

梅沢 まあ、ぎりぎりですかね。でも勇気が湧いたのは、今までこういうテストをすると、いっぱい当てはまると「もうだめ」という烙印(らくいん)を押すようなものが多いですが、イレブン・チェックは当てはまる項目を頭に入れて、「なくすように努力をしましょう」ということなんですね。

飯島 そうです。どんな人でも(努力をすれば)、半年後、1年後には当てはまる項目が減るチャンスがあります。

木佐 今日は先生にフレイル予防について」教えていただきました。

飯島 フレイル予防は、どんな人もちょっと一歩踏み出せば、始められそうなことがいっぱいあります。ぜひ頭に「栄養」「運動」「社会性」の要素をイメージして、予防を続けてほしいと思います。

梅沢 先生のお話はとても参考になりました。みんなでがんばりましょう。

木佐 「みんなで一緒に」がいいですね。今日はどうもありがとうございました。

トークショー「梅沢富美男さん×木佐彩子さんと学ぶ!介護予防」はこちらからご覧いただけます。