おいしく食べて低栄養予防!

令和2年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)通いの場に参加する高齢者を中心とした摂食機能等に応じた適切な食事選択の方策に関する調査研究事業(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 自立促進と精神保健研究チーム 本川佳子)。

低栄養について知りましょう!

■低栄養になると?
 以下のリスクが高まります!

・合併症の増加 ※1
・けがが治りにくくなる ※2
・死亡率の増加 ※3

■高齢期の低栄養傾向の割合
 年齢階級が高くなるにつれ、低栄養傾向の人の割合が多くなります。

令和元年度国民健康・栄養調査

■低栄養は身近な問題です!
 低栄養となる主な原因 ※4は以下です。思い当たる項目はありますか?

☑高齢者夫婦世帯や独居世帯による孤食
☑味覚や嗅覚の低下
☑身体活動量の低下
☑咀(そ)しゃく・嚥下(えんげ)等の口腔(こうくう)機能の低下

 低栄養の原因のうち、咀しゃく機能の低下は、食品の摂取に大きな影響を及ぼすことがわかっています ※5

 図のように咀しゃく機能が良好なグループと、咀しゃく機能不良グループでは緑黄色野菜、肉類等の摂取に差があることがわかります。
 

→低栄養や口腔機能等の状態について、早いうちからの「気づき」が大切です

自分の栄養・口腔の状態をチェックしてみましょう!

厚生労働省 高齢者の特性を踏まえた保健事業ガイドライン第2版

 回答結果が黄色になった質問が一つでもあると低栄養のリスクが高まります!※6

チェックの付いた項目を確認してみましょう

● 栄 養

「1日3食きちんと食べていますか」で「いいえ」と回答した人

欠食は低栄養に直結するリスクとなります。

・食事は回数・時間・バランスが大切です。
・1日の食事が2回以下の人は、3回食べている人と比較して、栄養素が不足したり、偏ったりする傾向があります。
 また、食べる食品の種類が少ないと、低栄養につながります。食事時間が不規則な場合も注意が必要です。
・1食あたりの食事から効果的に栄養を取る方法や間食の活用については管理栄養士等に相談してください。

「6カ月間で2~3kgの体重減少がありましたか」で「はい」と回答した人

体重の減少は要介護の発生率が高くなります。

・自己流の食事制限をしている場合→無理な食事制限には注意が必要です。
・欠食や食事がしっかり取れていない場合→配食弁当、食材の宅配、日持ちする缶詰等を使ってみてはいかがでしょうか。
・やせた理由が不明、または体調不良が原因の場合→かかりつけの医療機関があれば、かかりつけ医に相談してみてください。
 また、未受診の場合も医療機関の受診を検討してみてください。

 「栄養」の項目にチェックが付いた人は「体格指数(BMI)」「10食品群チェック」も確認してみましょう。

●口腔機能

「半年前に比べて固いものが食べにくくなりましたか」で「はい」と回答した人

咀しゃく機能が低下している可能性があります

・かみ砕く、飲み込む、声を出すといった機能があります。
 咀しゃく機能の低下は、食べられる食品の減少に関連し、低栄養へとつながります。
・最近気づくと柔らかいものばかり食べているということはないでしょうか?
 普段の食生活を見直してみましょう。
・自分の歯が欠けたり、本数が少なくなっていても、歯科治療(歯の修復、義歯調整)や口腔機能訓練により咀しゃく機能は改善します。

「お茶や汁物でむせることがありますか」で「はい」と回答した人

嚥下(えんげ)機能が低下している可能性があります

・むせは、誤嚥(ごえん)による呼吸器感染症や窒息のリスクにつながります。
・会話しながらや、よそ見をして食事をしている、いつも焦って食べているような人は、食事に集中することが大事です。食事に集中し、よくかんで、しっかり飲み込むようにしてみましょう。
・食事後や寝ている間にもむせることがある人は、かかりつけ医院やかかりつけ歯科医院への受診を検討してみてください。

 口腔機能の項目で一つでもチェックが付いた人は「口腔機能のチェック項目」も確認してみましょう。

栄養の項目で一つでも該当した人は、こちらの項目も確認してみましょう

 自身の身長と体重から自分の体格指数(BMI)を確認してみましょう。

出典「厚生労働省 食べて元気にフレイル予防」

★=身長165㎝で体重56kgの人の体格指数(BMI)
 体格指数(BMI)が黄色またはオレンジの範囲に位置した人は「低栄養傾向(やせ)」の危険性があります。

普段バランスの良い食事ができているか確認してみましょう

「毎日食べる」が1点で、それ以外を0点とし合計10点満点で評価します ※7
[ 合 計     点 ]

 目標は1日7点以上です!※8
 偏食をしないで、色々な食品を食べることは口腔機能 ※9、筋量・筋力 ※10、認知機能 ※11の維持と関連します。

口腔機能の項目で一つでも該当した人は、こちらの項目も確認してみましょう!

●口腔機能のチェック項目 ※12

合計点数が
 0~2点  口腔の機能低下の危険性が低い 
 3点 口腔の機能低下の危険性あり 
 4点以上  口腔の機能低下の危険性が高い 

 口腔機能が低下しているかもしれないと思ったら、かかりつけ歯科医に相談してみましょう!

普段から相談しておきましょう

 低栄養は身近な問題です。欠食をしない、色々な食品を食べてバランスの良い食事を心掛けるといった普段の生活を見直すことで予防することができます。
 また体格指数(BMI)や口腔機能の項目にチェックが付いた人はかかりつけ医療機関、かかりつけ歯科医療機関への早い段階での相談で重症化を予防することができます。
 普段から食事のことや口腔機能のことなどについて相談できるところを整理しておきましょう。


●口腔機能について相談できるかかりつけ歯科医など
●体調について相談できるかかりつけ医など
●食事の準備に困ったときに配食など
●運動ができる場所や相談ができるところ
●地域にある保健所、保健センター、地域包括支援センターなど

※ 引用

※ 1 Potter J, Klipstein K, Reilly JJ, et al. The nutritional status and clinical course of acute admissions to a geriatric unit. Age Ageing 24: 131-6, 1995.
※ 2 Bergstrom N, Braden B. A prospective study of pressure sore risk among institutionalized elderly. J Am Geriatr Soc 40: 747-58, 1992.
※ 3 Potter JF, Schafer DF, Bohi RL. In-hospital mortality as a function of body mass index:  an age-dependent variable. J Gerontol 43: M59-63, 1988.
※ 4 健康長寿ネット. 高齢者の低栄養, 外部リンク
※ 5 Motokawa K, Mikami Y, Shirobe M, et al. Relationship between Chewing Ability and Nutritional Status in Japanese Older Adults: A Cross-Sectional Study. IJERPH 18:1216;外部リンク, 2021.
※ 6 東京都健康長寿医療センター. 令和3年度老人保健健康増進等事業(老人保健事業推進費等補助金)通いの場に参加する高齢を中心とした摂食機能等に応じた適切な食事選択の方策に関する調査研究事業報告書
※ 7 熊谷修, 渡辺修一郎, 柴田博, 他.地域在宅高齢者における食品摂取の多様性と高次生活機能低下の関連. 日公衛誌, 50:1117-1124.2003.
※ 8 東京都健康長寿医療センター研究所. 健康長寿新ガイドラインエビデンスブック. 社会保険出版(東京) 2017.
※ 9 Hoshino D, Hirano H, Edahiro A, et al. Association between Oral Frailty and Dietary Variety among Community-Dwelling Older Persons: A Cross-Sectional Study. J Nutr Health Aging 25: 361-368, 2021.
※10 Yokoyama Y, Nishi M, Murayama H, et al. Association of dietary variety with body composition and physical function in community-dwelling elderly Japanese. J Nutr Health Aging 20: 691-696, 2016.
※11 Otsuka R, Nishita Y, Tange C, et al. Dietary diversity decreases the risk of cognitive decline among Japanese older adults. Geriatr Gerontol Int 17: 外部リンク, 2017.
※12 Tanaka T, Hirano H, Ohara Y, et al. Oral Frailty Index-8 in the risk assessment of new-onset oral frailty and functional disability among community-dwelling older adults. Arch Gerontol Geriatr 94.外部リンク, 2021.

 

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