【開催報告】 通いの場全国フェスティバル
地域で楽しく介護予防と生きがいづくり
〜「通いの場」自慢コンテスト最優秀賞発表!〜

高齢者の元気といきいきとした地域づくりを応援するイベント「通いの場全国フェスティバル」が、令和4年10月10日(月・祝)に東京・浜離宮朝日ホールで開催されました。新型コロナウイルスの影響で、通いの場等におけるリアル(対面)での活動が難しい時期が長く続きましたが、そうした活動も再開されつつあります。ポストコロナ時代の「通いの場」を見据え、全国各地で活動に取り組む人々が集い、語り合いました。当日の様子をご紹介します。

総合司会の町亞聖さん

◎通いの場とは?
通いの場は、地域の住民同士が気軽に集い、一緒に内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所です。地域の介護予防の拠点となる場所でもあります。

【主催者ご挨拶】

生きがいを発見できる場として
通いの場の拡大を国としても応援したい

厚生労働省大臣官房審議官(老健、障害保健福祉担当)
斎須朋之

本日は会場にご参集いただきありがとうございます。またインターネットでもたくさんの方が視聴していると聞いております。

日本は2025年には団塊の世代が全員後期高齢者(75歳以上)となり、65歳以上の高齢者数が3,677万人と全人口の約30%になると推計されています。また2020年から2040年に至るまでの20年間で、いわゆる現役世代(20歳から64歳)の人口は1,400万人減少すると言われています。このように、日本は非常に大きな人口構成の変動を前にしている状況です。

人はライフステージによって学校や職場、関係するコミュニティーが変化していくものですが、やはりいくつになっても仲間がいることが人生の一番の楽しみだと思います。そういった意味では、地域住民の皆さんが気軽に集まって、仲間づくりをしたり、生きがいを発見したりできる「通いの場」は、国としてもこの輪をより広げていけるように、精いっぱい応援したいと考えています。

ただ残念なことに新型コロナウイルスの影響があって、最近その活動が難しいと聞いています。そのような中、豪華なメンバーで本日のイベントを開催できたことを大変うれしく思います。皆さんもこれを機会に「通いの場」にご理解いただきまして、より良い集いの場ができるように祈っております。

通いの場全国フェスティバル(オープニング~主催者ご挨拶)はこちらからご覧いただけます。

【第一部】

●トークショー「梅沢富美男さん×木佐彩子さんと学ぶ!介護予防」

通いの場ナビゲーターを務めている俳優の梅沢富美男さんとフリーアナウンサーの木佐彩子さん、そして老年医学が専門の東京大学・飯島勝矢教授を迎え、介護予防や健康づくりについて学ぶトークショーが行われました。

トークショーの内容はこちらからご覧いただけます。

●公募企画「私のまちの『通いの場』自慢コンテスト」表彰式

部門1「ご当地体操&地域の魅力発信動画コンテスト」優秀賞受賞の皆さん
部門2「新しい通いの場アイディア&実践コンテスト」優秀賞受賞の皆さん優秀賞受賞の皆さん

超高齢化が進むいま、「通いの場」をはじめとする介護予防の取組の必要性はますます高まっています。しかし、コロナ禍の影響で「通いの場」の数が減り、参加率も低下しています。

「私のまちの『通いの場』自慢コンテスト」はそうした背景の中、「通いの場」の再開や活性化を目指して二つの部門を創設し行われました。部門1の「ご当地体操&地域の魅力発信動画コンテスト」は、日頃から実施している「ご当地体操」と地域の魅力を伝える「地域のPR動画」、部門2の「新しい通いの場アイディア&実践コンテスト」は、「通いの場」が抱える課題とそれを解決した事例を広く募集しました。

授賞式では、プレゼンターの梅沢富美男さんと、木佐彩子さんがにこやかに登場。優秀賞に選ばれた部門1の7団体、部門2の4団体、さらにその中から最優秀賞を1団体ずつ発表し、2人から賞状と盾が贈呈されました。

部門1 ご当地体操&地域の魅力発信動画コンテスト

■最優秀賞

●熊本県高森町「熊本県高森町」

41の公民館と集会所で自主的に「通いの場」が立ち上がっている高森町。地元の「高森音頭」に合わせた体操や、指の体操を目的にeスポーツに取り組むいきいきとした高齢者たちが印象的な動画です。「いきいき百歳体操高森096K(オクロック)バージョン」も紹介されました。

動画で紹介された「通いの場」の様子

【最優秀賞受賞のよろこびの声】
高森町ではケーブルテレビで発信しながら、町民みんなで「通いの場」の取り組みをがんばっています。これからも高齢者の方が元気でいられる町づくりを目指します。

■優秀賞

受賞団体のみなさんから「よろこびの声」を寄せていただきました。

●北海道鷹栖町「あったかすリハビリ体操教室」
このような貴重な賞をいただきまして大変光栄です。「あったかすリハビリ体操」の指導者のみなさん、獲ったよー。ありがとうございました。

●福島県喜多方市「熱塩加納おたがいさま広場」
熱塩加納は過疎も進んでおりまして、その中でも「お互いさま」でなんとか協力しあって、「さすけねぇ(大丈夫だよ)」とチカラを合わせていければいいなと思い、「熱塩加納おたがいさま広場」で「元気節体操」を作りました。本当にありがとうございました。

●東京都多摩市「多摩市地域介護予防教室」
すてきな賞をもらえると思っていませんでした。私たちは「正しい体操、正しい運動は元気を作る」と「皆さんが一回集まったら、感動を一つ与え、感動を一つもらう」を目標に考えてきました。介護予防ですからお年寄りが中心です。来年は今のまま、もしくはより元気でありたいと思います。

●愛知県名古屋市「社会福祉法人 名古屋市社会福祉協議会」
この体操はコロナウィルスの影響で、通いの場が開催できなくなった時に、参加者さんに心を元気にしてもらい、仲間とのつながりを感じてもらおうと、名古屋市と16区の社会福祉協議会が協力して作りました。

名古屋市高齢者はつらつ長寿推進事業の関係者の皆さま。皆さまの支援のおかげで素晴らしい場に立つことができました。ありがとうございます。これからもフレイル予防に努めたいと思っています。

●兵庫県神河町「杉 ふれあいサロン」
兵庫県の中でも人口が最小の町の神河町にある杉。その杉で「自分たちで、自分たちの良いところを見つけよう」というのが始まりで、自分たちで歌詞、曲、踊りを付けてできたのが「杉ダヨ!ええとこ音頭」です。いつか披露できたらいいなというのを目標にがんばってきました。

●島根県浜田市「浜田弁ラジオ体操やってみょー会」
浜田弁であいさつします。「この度はこがーなええ賞をやんさってたまげました。おおきに(この度は素晴らしい賞をいただき、驚きました)。DVDを作るときゃー、100人くらい人が気持ちよー協力してくんなさって、うれしかったです(DVDを作る時は、100人くらいの人が気持ちよく協力してくださり、うれしかったです)。このDVDを活用してじげの人らーがマメで長生きやんさることをねごーております(このDVDを活用して近所の人たちが元気で長生きをしてくれることを願っております)」。

部門2 新しい通いの場アイディア&実践コンテスト

■最優秀賞

●埼玉県春日部市「ふれあいウォーキング」

商店や企業の空きスペースを借り、介護事業所の理学療法士などが運動を教える「通いの場」。運動後は参加者がともに声を掛け合い、ウォーキングへと出かけます。場所の提供者は「買い物などの立ち寄りに期待」、運動のコーチは「社会貢献」、参加者は「介護予防や仲間づくり」と、三方のニーズが合致した取り組みです。

「ふれあいウォーキング」活動の様子

【最優秀賞受賞のよろこびの声】
信じられません。最優秀賞をいただいたのは、参加している皆さまと協力していただいている方々のお陰です。皆さまには「ありがとう」というより、「おめでとう」と伝えたいと思います。

■優秀賞

●北海道札幌市「夏休みだよ!したっけ、みんなで集まるかい」
●秋田県秋田市「未来を耕すプロジェクト『休耕地(田)を活用した畑作り』」 BY東部まちづくり部会
●佐賀県武雄市「かんころの家」

受賞団体の取り組み内容については、「通いの場運営者サミット」でご紹介しています。
サミットの内容はこちらからご覧いただけます。

ご当地体操&地域の魅力発信動画コンテスト表彰式の模様はこちらからご覧いただけます。

【第二部】

●基調講演

ポストコロナ時代の『通いの場』のカタチ
千葉大学大学院 近藤克則教授

これからは対面とインターネット活用の
ハイブリッドでの取り組みを進める

認知症予防や介護予防には頻繁に人と交流することが大事

「通いの場」は、高齢者の健康維持に役立つとして、全国にその輪を広げようと取り組んできました。そこに新型コロナウイルスの流行がやってきてしまい、対面での活動が思うようにできずに全国の関係者は頭を抱えました。しかし、その中でいろいろな試みがされ、少し希望の光が見えてきた面があります。今日は、「ポストコロナ時代の『通いの場』のカタチ」と題して、お話をさせていただきます。

まず前提として、認知症予防や介護予防のためには、人との交流がとても大事なことを確認したいと思います。これには多くの証拠があります。例えば「あなたは、ほかの人とどれくらいの頻度で会って話したり、交流したりしていますか」と聞いた上で、そこから10年間にわたり追跡調査を実施しました。すると、「毎日頻繁に人と会っている」という人に比べて、「週1回未満」と答えた人は、明らかに認知症になる確率が高くなり、要介護認定を受ける率も高くなっていました。このような多くの研究結果から、ぜひ週に1回以上は近くの人たちと「集まって交流したり、みんなで体操したりしませんか」ということで、住民主体の「通いの場」を全国でもっと増やしましょうという取り組みにつながっていきました。

しかしコロナ禍になると、高齢者の半数以上の人が「通いの場」のような所への参加や、人との交流を以前より減らしたと答えています。こうなると、人との交流がままならない状況では、要介護認定を受ける人が増えるのではないかという心配が出てきました。

では、どのように対策をすればいいのでしょうか。
まず「インターネットの利用」について検討しました。千葉県・松戸市にご協力いただき、市内の49団体のリーダーたちに調査をしました。2020年の5月、1回目の緊急事態宣言が出たあたりで、「顔の見えるビデオ電話を使っていますか」と聞いてみたところ、「使っている」と答えたのはわずか7団体でした。しかし「使ってみたいですか」という問いには、7団体を含めた約30団体が「はい」と答えました。

私たちは全国の66の市町村と一緒になって、約25万人の高齢者を対象に大規模な調査を行っています。そのデータでは19年に、「インターネットやメールを、過去1年間でどれくらい使いましたか」と聞いたところ、「月に数回以上使っている」と答えた人は、前期高齢者で72%、後期高齢者で47%、全体で約6割いました。さらに「毎日使っている」という後期高齢者も2割いました。19年で47%ですから、今はもう後期高齢者で使用している人は5割を超えていると見込まれます。今後は仕事でインターネットを使っていた前期高齢者が後期高齢者へと移っていくので、いずれ8割の高齢者が使う時代がくるのは間違いありません。

様々な研究結果から考える「ポストコロナ時代の通いの場」

インターネット活用は人との交流を促す効果がある

では果たしてインターネットは「交流すると健康になる」という面で意味があるのか。私たちが13年に約9千人を対象に調べたところ、「インターネットを友人や家族との交流に使っている」と答えた人は、「使っていない」と答えた人たちに比べて、うつの新規発症が3割も少ないという結果が出ました。また16年の時点でスポーツの会に参加していない約3,600人を対象に行った調査では、インターネットを使っていなかったグループで、19年に参加を始めたという人を1とすると、インターネットを使っていたグループではスポーツの会に参加を始めた人が約1.7倍も多くいました。やはりインターネットを使うと、連絡が取りやすくなったり、情報が入りやすくなったりします。その結果、社会への参加や交流を促し、うつを予防する効果があると考えられます。

そこで早速、高齢者にタブレット貸し出し無料体験講習会を行ってみました。初日は対面で、その後はオンラインで体験してもらったところ、「楽しかった」「自分でもできるようになったので、教えてあげたい」など、たくさんの声をいただきました。一方で、「やはり対面がいい」「画面越しでは交流した気がしない」という意見もありました。ただ、もしかしたらこれから新型コロナウイルスの第8波の流行が来るかもしれません。そう考えると、もっとインターネットやスマホを使える高齢者を増やしておくことも大事ではないかと思います。

「そうは言っても私の周りは田舎だから無理だよ」という声も聞こえるのですが、こんな自治体もあります。高知県日高村では「村まるごとデジタル化事業」を立ち上げ、スマホ普及率100%を目指しています。総務省もデジタル化の取り組みの応援を始めています。こうした背景を考えると、ポストコロナ時代というのは、高齢者もスマホを使う時代、インターネットを使う時代、と言えそうです。連絡や予約にも便利に役立ち、健康にも良い効果がありそうです。体験講習会に参加した後期高齢者の方でも、「誰かに手伝ってもらえれば、(インターネットが)できるようになった」と答えていた方が多くいらっしゃいましたので、こうした流れを後押しすることも重要でしょう。

以上のことからポストコロナ時代の「通いの場」は、対面できる時は対面で行い、それが危ない時はオンラインも併用する、ハイブリッドな形がいいのではないかと考えています。通常は対面で活動していても、大雨の日はオンラインを使うなど、時と場合に応じてインターネットも組み合わせて活動するのが、当たり前の「通いの場」のカタチになっていく、それがポストコロナの時代ではないでしょうか。

基調講演「ポストコロナ時代の『通いの場』のカタチ」はこちらからご覧いただけます。

●通いの場運営者サミット

「私のまちの『通いの場』自慢コンテスト」における「新しい通いの場アイディア&実践コンテスト」にて優秀賞に選ばれた通いの場の代表者に登壇いただき、取組内容の紹介や課題解決の工夫についてお話しいただきました。

通いの場運営者サミットの内容はこちらからご覧いただけます。

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